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盛岡地方裁判所遠野支部 昭和36年(わ)32号 判決 1961年10月20日

被告人 近藤一郎こと権赫彩

昭一〇・三・一八生 パチンコ店主

主文

被告人を四月の禁錮に処する。

理由

被告人は

一、公安委員会の運転免許を受けないで、昭和三六年六月九日釜石市大字釜石一三地割一一番地道路で普通乗用自動車を運転した

二、呼気一リツトルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有し、その影響により正常な運転ができないおそれがある状態で、同日時、場所で同自動車を運転した

三、自動車運転業務従業者であるが斯かる者は居常正常な運転ができないおそれがある状態まで酒に酔うことを抑制すべき業務上の注意義務があつたのに之を怠り早朝から夕刻にかけビール六本、清酒六合及びジヨニーウオーカー数杯を飲み同日時、自動車を運転したため上記番地先道路に差し掛つた際、酔眼朦朧、進路前方の注視不能道路右側を同方向に歩行中の千田恵子に背後から自車を衝突、同女を路上に転倒させ、全治まで約五〇日間を要した左上腕左下腿左肩擦過傷、左肘部挫創、右第一、二腰椎横突超骨折の傷害を負わせた

以上は何れも被告人の自白、実況見聞調書、酒気帯び又は酩酊の判定結果についてと題する報告書、千田恵子の検察官に対する供述調書、診断書及び被告人の供述調書二通に拠つて認定一は道路交通法六四条、一一八条一項一号、二は同法六五条、一一八条一項二号、三は刑法二一一条前段に該当、以上は一個の行為であるから刑法五四条一項前段及び一〇条に依り最重い三の罪の刑に依るべく禁錮刑を選択、自動車運転時被告人が事物の理非を弁識し又は其弁識に従つて行動する能力著しく減退していたか否、所謂原因に於て自由なる行為に於ては犯行時を原因的行為のときに求めべきで当日早朝被告人がビールを飲み始めた頃は正常な精神状態だつたから刑法三九条の適用なし仍つて其点の判断を省略法定刑の範囲内で処断

(裁判官 中村貞一)

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